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様な傾向を示したのかもしれない。しかしながら、本研究では13歳運動群と17歳セデンタリー群の測定がなされておらず、次年度の課題となった。
さらに本研究におけるもう一つの問題点は、今回用いた近赤外線分光装置は絶対値が測定できず、安静時からの相対的変化のみを示していることである、したがって、スプリント中に明らかに血液量が安静時に比べて低下していたことを考えると、スプリント中に酸素消費が高まったのか、それとも血液量が低下したため見かけ上の酸素消費が高まったのかどうかについては、依然不明瞭である。しかしながら、この方法は実際のフィールド上での測定が可能であるので、この点を解決することは今後の課題として重要であると考えられる。
筋の酸素消費が高まったかどうかについてはさらなる検討が必要であるが、安静時に比べてスプリント中に筋内がかなりの低酸素状態であったことは間違いはなく、この状態がより亢進しているほどスプリントパフォーマンスは高い傾向にあった。また、この能力について日頃の運動量が関係する可能性が示唆された。

まとめ

解糖系能力が成人に比べて低いという特徴を持つ発育期の子どもにおいて、スプリント中および回復中の筋の酸素動態がどのような状態にあるのかについて、および日頃の運動量、すなわち運動部への加入の有無との関係について検討した。その結果、筋の酸素消費が高まったかどうかについてはさらなる検討が必要であるが、スプリント中に筋内は相当低酸素状態を示し、この状態がより亢進しているほどスプリントパフォーマンスは高い傾向にあった。また、この能力について日頃の運動量が関係する可能性が示唆された。

文献

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